インタビュー 公開日:2010年5月26日(水)
織田善行 副理事長(掲載当時)
【紹介】
織田善行
東京大学文学部社会学科卒業後、大手生命保険会社Aflacの人事部長・常務取締役を歴任。
現在はアドベンチャーコーチング株式会社の代表取締役およびNPO法人ソフトパークにて副理事長を務めている。
大手生命保険会社Aflacの人事部長・常務取締役を歴任という経歴を持つ織田善行氏。
彼が何故現在は人材育成事業を行っているのか。
織田氏の現代の若者や社会に対する思いに焦点を当てる。
若者に、社会に希望を与えたい
――次世代のリーダーを育てたいという思いからNPOを設立し、現在は個人・企業に対する支援だけでなく教育活動・起業支援など多岐にわたり活動をなさっています。
このような活動を通じて、社会貢献のあり方をどのように考えていらっしゃいますか?
織田善行氏(以下織田氏):
以前は努力すれば豊かな人生を歩むことが出来ましたが、今は努力だけでは豊かになることは難しい社会です。
今の社会は”希望”が持てない時代です。
生きるということは「将来に対してどう行動していくか」という自分の意志が存在することなのですが、現代では将来に対する希望がなく「生きている」=「死んでいない」だけになってしまっている人たちが多いのではないかと思います。
これを何とかしなければならない、若い人たちに希望を与えたい、ということが私の最大のテーマであり、そのために何をすれば良いかという事を考え活動しています。
自分のやりたいこと、好きなことをしてほしい
――生きるということで思い出したのですが、”人は二度産まれる、一度は生きるため、二度目は生きる意味を見つけるため”という言葉があります。この言葉にある”二度目、生きる意味”を見出せないためにこの先伸びていく筈の若い芽が摘まれてしまう厳しい時世と感じます。
その中で先を目指す若者の、若者ゆえの心の甘さ・弱さによる失敗も多いと思います。
もちろん失敗を積み重ねて成長していくものでもありますが、その失敗や甘えに対する叱咤やお話を頂くことも成長していくうえで大切なのではないでしょうか。
今の若者に対して「こうあってほしい」という想いや、今までの経験からのアドバイス等がありましたらお願いします。
織田氏:
私はAflacを、63歳の役員定年を8年残した55歳の時に辞めています。
それは少し前にC型肝炎という病気になったことがきっかけでした。
このままだと肝臓がんに罹り死んでしまうというところまで悪化したのですが、運よくそれが治ったのです。
病気が治り命を取り留めたことで、こう考えるようになりました。
「このまま死んでいたかもしれない病気が治ったのだから、これは別の人生を歩めというシグナルなのではないか」
人生をもう一度生き直してみよう、そして自分が子どもの頃に何をしたかったのかを考え、人事部長であった経験などから「人を育てることをしたい」と思い至りました。
45歳くらいのときに外部での研修で「10年後の自分に向けたメッセージ」を作成したのですが、私は「55歳の自分はまだまだ元気で、独立して、ひとかどの研修講師をやっている」と書きました。今、それが実現しているのです。
――自分の将来を見据えること、目標を持ち続けることが重要ということでしょうか。
織田氏:
はい。仕事は苦労が多いのですがこちらの方がはるかに面白くやり甲斐がありますし、自分で考えたテーマに取り組むことが出来ます。
「人を育てること」という夢はずっと持っていて、これからもその夢を持ち続けて実現に向けて取り組んでいくのですから、そういうことでは私は生涯現役だと思っています。
自分のやりたい事を見据え、自分の好きなことを出来る。それが生きるうえで大切なのです。
行動もせずに待っているだけでは好きなことは見つからない
――現代の若い人たちの中には、自分の夢を諦めてしまう人や、5年後10年後のビジョンを持てない人が多いように思いますがいかがですか?
織田氏:
選択肢がありすぎるためにあれこれ迷ってしまい、選べなくなってしまっている人も多いと私は思っています。
選択肢がなければその道を歩むしかないのですが。
――選択肢が多すぎると、人は何も選べなくなると言いますね。
織田氏:
まさにその通りの問題です。
私が学生に対して「好きなことをすればいい」を言っても、好きなことが見つからないので大学に残るという生徒が多くいます。
しかし、それでは”好きなこと”は生涯、永久に見つからないでしょう。
頭の中だけで色々考えるのではなく、実際に何かしらのテーマに取り組み行動していくうちに好きなことに気がつくものです。
――知人の話なのですが、彼女も自分の好きな事・やりたいことが見つからないまま”とりあえず”と就職しました。
しかし、その仕事を通じて彼女は「人と話すことが好き」と気づき「色んな人と接する仕事がしたい」という夢を見つけ、そして改めて勉強をし、現在は接客として生き生き働いています。
やはり行動を起こしてみないと、自分の好きなことにも気づかないのですね。
織田氏:
そういうものなのですよね。
「お腹を空かせたロバが野原で干草を2つ見つけましたが、どちらを食べようか迷っているうちにロバは死んでしまいました。」という話があります。
どちらも同じものなのに、悩んでいるうちに結局何も出来なかったという話ですね。
何も選ばずに迷い、何も行動せずに待っているだけでは自分のやりたい事など見つかるはずも無いのです。
何でもいいからまず飛び込んでみる、そうすれば必ず自分のやりたいことが見えてきます。
“いのち”を通して考えて欲しい
――若い人たちに希望をもって欲しいということですが、これからはどのような活動を考えてらっしゃいますか?
織田氏:
日野原重明先生の「いのちの授業」というものがあります。
小学校中学年や高学年くらいを対象として、日野原先生のビデオを見せながら “いのち”の大切さを考えるというものです。
その中で自分の、そして友達の胸に聴診器を当てて心音を聞くというものがありますが、それによって、自分の”いのち”と友達の”いのち”を感じることが出来るのです。
私は、このNPOを通じてその活動を広め、子供たちに「人とのつながり」というものを感じて欲しいと思っています。
“無縁社会”の中で生きるのではなく、様々な人たちと触れ合いながら、将来に対しての希望を持って生きることをして欲しいですね。
また、学校と繋がりを持つことで、新しい教育支援活動ができるのではということも考えています。
インタビュー日:2010年4月
※所属、役職などはインタビュー当時